ウルシスト®︎ と行く漆旅 ~近江編 その⑦ 作り続けられて600年以上、政所茶~

茶道教授 水上麻由子さんとの共同企画、ウルシスト®と行く漆旅~近江編の3日目。
室町時代から600年以上作り続けられている 政所茶を訪ねました。



前日に訪ねた蛭谷(ひるたに)の「木地師発祥の地」から、車でわずか5分ほどのところです。
中世の日本の原風景が残るこの「奥永源寺」と呼ばれる地域にとって、「政所茶」と「木地師」という2つの文化は、どちらも大切な宝物なのです。

江戸時代、各地へ渡っていった木地師やその末裔がこのお茶を土産として持っていったり、その地でお茶が育てられたりという事例も見られると、地域研究者の筒井正先生が教えてくれました。

この日、美しい川の向こうから手を振って、素敵な笑顔で迎えてくれたのは、政所茶生産振興会副会長の白木佳代子さん 。


白木さんの茶畑には、なんと樹齢300年の茶樹があり、今も茶葉が採れる日本最古の"現役"の木です。

7m四方に広がる枝葉が一本の木だと聞いて驚きました。


在来種を守り、農薬を使わない自然栽培。

何十年、何百年とかけてつくられる土や、愛知川(えちがわ)の清流が湛える深い霧。



地域の環境と人々の手仕事が、政所茶のやさしく深い味わいにつながっています。



とはいえ、山の斜面での畑仕事や様々な手作業はなかなかの重労働。
数軒の農家だけで守り続けることは、容易なことではありません。

そんな中、2012年に滋賀県立大学の学生たちが白木家の畑の一部を借りてお茶づくりをスタートしました。
「政所茶レン茶"ー(まんどころチャレンジャー)」を立ち上げた若者たちは、先輩から後輩へとバトンをつなぎ、しかも初代の一人は卒業後も地域に残って、今もお茶を育てています。

私たちが訪れた日も、13代目の学生たちが落ち葉を敷く作業中で、元気に「こんにちはー!」と挨拶してくれました。


最近は高校生が、さらに手間のかかる玉露作りに挑戦したいと名乗りをあげているそう。

麓の古民家施設では、茶もみ体験イベントも開催中でした。


この春、白木さんの父・駒治さんは残念ながら他界されましたが、力を尽くして守ってこられた政所茶は、娘の佳代子さんを中心に、若い力と地域の人々、そして全国のサポーターへと確かに受け継がれていました。

日本最古の茶の木には可憐な白と黄色の花が咲き、ほのかにいい香りがしていました。


これから政所の茶の木たちは、深い雪の下で、次の春を待ちます。
強く、逞しく!


お茶も生き物だから、作り手の思いをちゃんと受け止めているのだなぁ。
漆もまた然り。
なんだか愛おしい気持ちになりました。

旅のレポートはもう少し続きます。

茶文化とも縁が深く、地域の名前にもなっている「永源寺」、そして湖東三山のひとつ「百済寺」、2つの古刹へ。。

つづく。


旅の記録:2025年11月「ウルシスト®と行く漆旅~近江編」