丹波漆の里 夜久野町の取り組み

丹波漆の里 夜久野(やくの)町

京都府と兵庫県の県境にある福知山市夜久野(やくの)町。
京都からも神戸からも車で2時間ほどの、のどかな山間地域。古事記にも地名が登場したり、古いお祭りが今も引き継がれていたり、歴史好きにはそそられる要素が盛りだくさんの魅力的な土地です。



夜久野のもう一つの重要な歴史が「丹波漆(たんばうるし)」。

奈良時代から漆掻きが行われており、江戸時代から明治にかけては、国内でも有数の漆の産地でした。また、山陰・中国地方などに出稼ぎにでかけた漆掻きたちが夜久野に戻って漆を売る、取引の拠点でもありました。

いまは「丹波」と聞くと黒豆!または栗!と連想しますが、当時は丹波と言えば漆、または漆掻き道具のことを指すほどだったのです。


先日、東京都墨田区のコトモノミチ at TOKYOで、丹波漆の展示・体験イベントがあったので、お話を伺ってきました。






 

丹波漆を後世に伝える

今回のイベントでお話を聞かせてくれたのは、福知山市営の施設「やくの 木と漆の館」の職員であり、漆芸作家としても活躍する平岡明子さんと高島麻奈美さん。



「やくの 木と漆の館」では、来訪者にさまざまな情報や体験プログラムを提供しながら、丹波漆のPR活動を行っています。

戦後、ほとんど途絶えてしまった丹波漆ですが、平成24年にNPO法人丹波漆が設立され、現在は福知山市と協力して丹波漆の保存と復興に取り組んでいます。



漆掻き職人は2人。NPOの理事長でもある岡本氏と若き後継者の山内氏。加えて最近は、地域おこし協力隊のメンバーが1名、漆掻きの研修に入りました。


丹波の漆掻き道具。漆を入れる筒(写真左)が他の地域よりだいぶ小さいです。


さらに、夜久野で漆掻きの技術継承とともに取り組まれているのが、ウルシの木の植栽。

活動開始当初は「ウルシはかぶれる」と地元の人々にも嫌がられ、植栽地の確保が困難だったため主に休耕田に植えていたのですが、田んぼは水はけが悪く、5-6年で木がダメになってしまいます。その後徐々に地元の理解も得られるようになり、現在は水はけのよい畑地に植えられるようになりました。もともとこの辺りは黒ボクという火山灰が堆積してできた土で形成されており、畑作に向いているのです。

現在、ウルシの木は約1000本。まずは3000本を目指しているところです。漆掻きができるのは年間15-16本で、量にしてわずか3キロ。漆掻きだけで職人が生計を立てられる量ではありません。そしてやはり、鹿の被害という大きな問題があります。フェンスを張るなど経費と労力をかけながら、地道な努力が続けられています。

安定生産までの道のりは決して平たんではありませんが、この数年はNPOと福知山市も連携を強化し、丹波漆復興の取り組みは確実に前進しています。後継者が生まれていることが、何よりもその証でしょう。


 

「やくの 木と漆の館」の漆体験

「やくの 木と漆の館」では、地元作家の作品ギャラリーや、丹波の漆掻きに関する資料展示を見ることができます。
そして、来訪者にとって最も楽しみなのが、拭き漆、蒔絵、金継ぎなどの、要望にフレキシブルに応えてくれる豊富な漆体験メニュー。

今回はコトモノミチ at TOKYOで、出張ワークショップの開催です。


蒔絵体験に参加してみました。

白蝶貝のペンダントトップに模様が置き目(下絵)してあるので、その絵に沿って赤い漆を塗っていきます。


ブドウのようなモチーフを選んだのですが、、、


〇を描くのが大変~(笑)!


「アレンジしていいですよ」と言われたので、果敢にも〇を追加して漆塗り完了。

しばらく「湿し」をして漆を乾かします。

漆は70%程度の湿度のある環境で乾きます。工房では温度と湿度を調整した専用の「湿し風呂」に入れるのですが、体験ワークショップでは、濡れタオルのうえに作品を置いて上から洗面器をかぶせて即席の湿し風呂に。。


洗面器とタオルでお風呂感が満載です(笑)!

10分ほど待ってからチェック。


塗った漆のうえからはぁーっと息を吐きかけて、塗り面がわずかに一瞬虹色になったらOK。といっても慣れないとなかなか虹色を判別できないのですが。。。

いよいよ金粉を蒔きます。



真綿に含ませた純金消粉(けしふん)をさささーっと滑らせるように。


模様はあっという間に赤色から金色になりました。

これで漆が完全に乾いたら完成です。
1日である程度乾きますが、身に着けるものなので、念のため使うのは1か月くらい経ってからになります。

 

ぜひ夜久野へ

ワークショップ中、とても丁寧に楽しく説明してくださる平岡さんと高島さん。

実はお二人、ともにIターン移住者。平岡さんは神奈川県出身で京都で漆を学んだ後に夜久野へ。ご自身は漆芸、ご主人は木工作家です。高島さんは富山県出身。同じく京都で漆を学び、その後夜久野に移住しました。

夜久野では、館の職員としての業務と作家活動を両立しています。



都会の京都からは遠いですが、アトリエを持ったり、作家活動をするには夜久野はとても環境がよいとのこと。

「ぜひ夜久野にきて」とお誘いいただきました。
温泉もあり、黒ボク土に育った野菜は美味しく、高島さんによればジビエも美味しい。平岡さんのお勧めは夜久野そば。
そしてもちろん「やくの 木と漆の館」で漆体験を。

地域の話をする時の平岡さん、高島さんの楽しそうな表情。
本当に夜久野のことが好きなんだなと感じます。

盛大な地域の伝統「額田のまつり」と「つくりもん」は毎年10月第2土日に行われます。
「額田のまつり」では、回転する山車を担いで町民たちが朝から晩まで走り回る。
「つくりもん」とは、野菜や果物を使って大きな人形を飾る農民のお祭り。大河ドラマや映画の人気キャラクターなど、かなりの力作が並ぶよう。
詳しくは福知山市のホームページへ。


興味津々です!!
ぜひこのころに訪ねたいですね。




取材協力:
やくの 木と漆の館
https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/64/13903.html

コトモノミチ at TOKYO
https://coto-mono-michi.jp/

 

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