「吉野塗」のはなし

江戸時代に栄えた幻の漆器「吉野塗」

奈良県吉野地方で作られていた、黒地に朱赤で木芙蓉の絵を描いた特徴的な漆器「吉野塗」。


江戸時代にはこの地方の特産品として作られ、全国的に人気のあった華やかな塗りものですが、残念ながら今は途絶えてしまいました。

起こりは豊臣秀吉のころという説が有力ですが、定かではありません。江戸中期の茶人、藤村正員(せいいん)によって書かれた「茶道旧聞録」に、千利休が好んだお椀のひとつとして「吉野椀」が挙げられています。
江戸後期以降は北前船などによって、全国に広がっていき、漆器産地であった輪島や山中(加賀)でも模倣して生産されました。金の蒔絵装飾は無くとも華やかで、著しく高価ではなかったことも、多くの人々に愛された理由のひとつでしょう。

現在は骨董品として、愛好家にとても人気があります。

こちらは、京都で町家文化を広める「京文化の町家 ひなみ」の川端友里さんに見せていただいた吉野塗の数々。





吉野塗はお椀が多いので「吉野椀」と称されることが多いのですが、料理家でもある川端さんのコレクションはお膳からお椀、お皿までさまざま。
モダンにも思える大胆な文様は、料理を載せてもお互いを惹き立てあう器として、昔も今も愛されています。

 

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